IR統合型リゾート、カジノ施設は地方は難しい?

こんにちは紺野昌彦です。

IRいわゆる統合型リゾート、日本版カジノはリアルタイムに動き出しています。
反対する勢力も多く、一部地域では1000名を超す反対集会や、4月以降の統一地方選挙でもカジノの誘致を争点化する動きも見えつつあります。

とは言え既に日本には、パチンコ、競馬、競輪、ボートレースなど既存の賭博が途方もない数が存在しているので、現時点でカジノが認められることに拒絶感が出るのもナンセンスにも思えることは、以前からこのブログで何度か書いてきました。

そもそもIRすなわちカジノ法で、厳格な法整備ができるおかげで、これまで大きな対策が施されなかった日本の既存ギャンブルに税金や依存性対策などで、大きくメスを入れる事ができるのも、IR、カジノ法の整備あってからなのも事実でしょう。

これまで、いくつかの地方自治体のカジノ誘致を見てきましたが、IR、カジノ法ができてから実際に具体的な施設の概要が出ていない状況で、各地方自治体はマスタープランの公募や、仮プランの作成を進めていました。基準は統合型施設の総床面積の3%がカジノとして認められるという部分のみ。

ここでようやく政府から床面積の定義となる数字が出てきたのですが、おそらくは大都市部以外の候補地からすると、かなり大きな施設であることがわかったのです。

IR施設の規模

IR施設と一口で言っても、相当な規模でおそらくはこれまで各地方自治体が想定していないサイズ感が提示られました。

併設ホテルの規模

総床面積10万㎡となるホテルが最低基準として検討されています。(ほぼ決定)

40㎡以上の客室 2000室以上
70㎡以上の客室 500室以上

上記の客室面積をカバーできている2500室以上の規模のホテルを併設しなければいけません。

さてでは2500室以上のホテルは皆さん想像ができるでしょうか?
日本の代表的なリゾート地でもある沖縄のホテルを比較できるように調べてみました。現在では年間観光客が1000万人を超える日本屈指のリゾート地です。

リザン谷茶ベイ 826室
ロワジールホテル 640室
残波ロイヤルホテル 465室
ザ・ブセナテラス 410室
ヒルトン沖縄北谷 346室
ハイアット瀬良垣 344室
グランメールリゾート沖縄 300室
カヌチャリゾート 295室

沖縄に観光で足を運ばれた方はご存知でしょうが、一見して上記の表のホテルはかなりのサイズのホテルですが、それですら1000室に達する規模のものすら存在しません。
こう見ると2500室以上のホテルとなれば相当の規模であることが理解できると思います。
では実際にこの2500室の規模に該当するホテルは日本にあるのか?
これも気になったので調べてみました。

品川プリンスホテル 3679室 日本最大
アパリゾート横浜 2311室 建設中
アパリゾート幕張 2007室
新宿ワシントンホテル 1633室
ホテルニューオータニ 1479室

このように現在日本では首都圏のみにしか1000室を超えるホテルは存在しません。
また品川プリンスやアパホテルなどは、大都市部のビジネスホテルということもあり、客室の広さは15㎡前後でしょう。
政府が指標として出している最低40㎡となると既存のこれらのホテルよりも総床面積は倍以上となることは、間違いありません。当然、ブライダルや会議室などの用途面積も出てきますからね。

MICEの面積

さてさてIRは統合型リゾートなので、当然ホテルだけではありません。
要となるのは前述のホテルと、もう一つ重要なのが国際会議施設いわゆるMICEとなります。
大きな会議を開催したり、巨大な展示会が開催できる会場となります。日本で代表的なものは、幕張メッセや東京ビックサイト、インテックス大阪が有名でしょう。
では実際にこれらの日本を代表する展示施設の有効床面積はどれくらいでしょうか。

日本の代表的な国際展示場の有効床面積

東京ビックサイト 95420㎡
幕張メッセ 75098㎡
インテックス大阪 70078㎡
ポートメッセなごや 33946㎡
パシフィコ横浜 20000㎡

日本の代表的な国際会議場の収容人数

東京国際フォーラム 最大会議室5012名 施設全体10642名
パシフィコ横浜 最大会議室5002名 施設全体11276名
シーガイアコンベンションセンター 最大会議室3300名 施設全体5959名
名古屋国際会議場 最大会議室3012名 施設全体9868名
福岡国際会議場 最大会議室3000名 施設全体5047名
大阪府立国際会議場 最大会議室2754名 施設全体8578名

MICEとは上記の二つの性質を持ち合わせた国際会議場となるので、今回IR、統合型リゾートでは先ほどのホテルとプラスで上記の規模感の国際会場と大規模展示場が要求されることとなります。
では政府が出すMICE基準はどれくらいのものか。
もちろんこれも先ほどのホテル施設と同様に大規模なものが提示されています。

ざっくりまとめたものが下記の表となります。

カテゴリー1 国際会議場2000名収容 展示会場12万㎡
カテゴリー2 国際会議場6000名収容 展示会場6万㎡
カテゴリー3 国際会議場12000名収容 展示会場2万㎡

このカテゴリー1から3までのどれか出ないと行けないわけで、この規模のMICEと先ほどのホテルが最低装備で必要となるわけです。

肝心なカジノ施設を併設する場合は、このホテルとMICE施設の総床面積の3%がカジノとして併設が認められることとなるので、カジノ企業や地方自治体がもし大規模なカジノ施設を併設したい場合は、この基準以上のホテルとMICEを併設させる必要が出てくるのです。

実際に地方で実現可能なのか?

これらの比較の表をご覧になって既に気づいている方もいらっしゃるでしょう。
ホテル、MICE共に大規模施設の順位を出した表ですが、東京、横浜、大阪などの大都市部にしか存在していないのです。
大阪に至っては1000室を超える大規模ホテルも現在存在していません。もちろん名古屋や福岡などの規模を誇る都市ですら、この規模のホテルは存在していないのも、現時点での大きな特徴の一つでしょう。

現在のIR、カジノの有力候補地

現在のIR、カジノの有力候補地としては、大阪がトップでしょう。
横浜は実際にはペナントレースから脱落した可能性が高いので省いて考えてみても、北から順に北海道(苫小牧、留寿都)、千葉、名古屋、和歌山、長崎などが有効と考えられますが、この規模のものとなると、大規模国際空港を併設した大都市である大阪、千葉のみが現実的な気がします。
果たしてその他の地方都市はどのような選択をして、また各地で進出を考えているカジノ企業はどのような対策を取るのかこれからが見ものです。

別の視点から考えると、地方は地方で土地の安価な分、この規模の施設用地を確保する単価は安価でしょう。
当然首都圏や大阪などの大都市部は土地の取得金額だけでも地方の数倍から数十倍は否めません。また用地の確保も難しいでしょう。この点では大阪は問題がありません。

仮に地方都市ならば、2022年の北京冬期五輪やアジアの所得増加でかなりインバウンドが期待される北海道か、現在で8000室の客室が不足している沖縄くらいかもしれません。

ただ集客という観点で見ると、有名な観光地やリゾート地、集客に有利な何らかのものがなければ、地方は圧倒的に不利でもあり、このバランスを考えると地方都市でもかなり限定されてくるでしょう。
本来は地方創生というポジションで進められてきたこのIR、統合型リゾートが今後とのようになるのか観察を続けて行きたいと思います。

紺野昌彦

紺野昌彦

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