立ちはだかる国外財産調書制度
海外に資産をもつ日本人が増加しています。 これはグローバル化の加速や、ネット普及による情報リテラシーが急激に加速していることが理由としてあげられます。
もう少しわかりやすく言うと、多くの人たちがこれまで以上に情報を得るという状況は、日本の税率の高さや海外の税率の低さ、そしてキャピタルゲインやインカムゲインが非課税の国の存在が一般的にな知識になりつつあります。これは日本での資産運用より海外での資産運用を考える人口が増加しているのが加速のひとつの理由でしょう。
数百万円程度の資産を海外で運用したり、海外で預金する分には何も問題はありません。 これが一定の額を超えた時に立ちはだかる問題が発生するのです。
国外財産調書制度
国外財産調書制度とは、日本国内の居住者、ようするに日本人が12月31日時点で合計で5000万円を超える財産を国外で保有している場合には、国外財産調書(保有する国外資産の内訳明細書)を作成する義務が課せられているからです。この国外財産調書は翌年3月15日までに所轄の税務署長に提出しなければならないという制度となっています。
恐ろしいのは2014年12月31日時点での法改正で、以降の国外資産で、不提出・虚偽があった場合は刑罰の適用が開始されました。 5000万円未満なら問題ありませんが、例えば僕は4000万円だから大丈夫だと、2年ほど放置した場合、仮にタイコンドミニアムだったりすると、1年で10%から20%は資産価値が上昇します。よって、2年で4840万円になり、3年では5000万円を超えてしまいます。 カンボジアの地価の上昇は昨年は21%ありましたので、2年もすると、4000万円は5760万円に膨れ上がります。
もちろん香港のファンドでは元本保障の低金利のものでも6%、7%はざらにありますし、元本保障でなければ15%から30%の金利のものだってあるわけで、知らない間に資産価値が上昇するのです。
とある知り合いも海外の不動産が4000万円程度あり、とあるきっかけで海外でのFX口座にうっかり1500万円ほど送金してしまい、この時点で申告義務を超える額に達した方もいました。 このような状況のなか、海外で資産が大きくなれば、夫婦で資産を分けるなど、様々な方法で少しでも海外資産を分散する方法を取られている方が多いようです。
国外財産調書を出さないで良い方法。
海外のオフショア法人やノミニー制度を利用することでなんとか逃げ切ることは可能でしょう。それぞれの国では認められている方法であっても、厳密にはこれらの行為は日本の法律からみると違法となります。
それでも国税庁や税務署が行動をとれるのは、日本国内だけで、外国では調査権限はありません。これらの調査権限は国家権力の一環として行われていて、国家権力を行使できるのは、日本国内だけだからです。
どういうことかと言うと取引の相手方が外国人・外国企業の場合、国税庁・税務署は外国(日本の領土の外)に出向いて国家権力を背景に調査することはできないのです。
これを利用して、外国との取引を利用して、脱税や違法とまでは言えないまでの租税回避行為を行う企業が増えてきているのは事実です。 これは何も日本だけではなく、昨年明るみになったFacebook、スターバックス、Googleなどもこのようなスキームで租税回避しているご時世なのです。
※香港政庁から自発的に日本の国税庁に情報も提供されています。
日本の国税庁が香港の税務当局に対して情報提供を要請して、香港の税務当局が情報を出してくる形の情報提供が考えられがちですが、香港の税務当局から日本の国税庁に自発的情報提供も実際に存在しています。香港の税務当局が香港で香港人・香港企業相手に課税や調査をする中で、日本の国税庁にとって有益と思われる情報があった場合、日本の国税庁に有益となる情報を提供しています。 また自動的な情報提供としては、香港の税務当局がノミニーではない日本人名義と思われる口座や法人が得た利子・配当などの情報を、日本の国税庁に一括して送る形も2011年から取られるようになっているので要注意です。
確実に合法で国外財産調書から逃れる方法は日本の非居住者になるほかはないでしょう。 日本を離れて満2年を経過すると基本日本の税法の縛りはなくなりますが、住民票を国外に写し、年間181日以上海外で居住する以外は方法はないでしょうね。
非居住者の相続について
また別の角度で見てみると、日本では3代財産は続かないと言われています。これは相続税が高税率だからです。 香港をはじめアジアの国々では相続税という税金が存在しない国も多く、このような国に財産を移す方も多いようです。 ただしこれらの国や地域の財産を、日本国内に居住する子や孫に相続すると当然日本国内で相続税の対象となります。 逆に海外に居住して5年以上の子や孫に相続する場合は相続税や贈与税の対象外になるので、以前の武富士裁判などでは、実質的に相続税が回避された判例もあったりするのも興味深いところです。 日本より早く資産が増加する海外でも知らぬ間に大きな問題になることもあるようですので要注意です。
http://www.ird.gov.hk/index.htm
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hotei/kokugai_zaisan/
ちなみにアメリカのトラストを利用した国外財産調書に報告しないでも済む、合法的な資産管理方法もありますので近いうちにブログで書いてみたいと思います。実際に日本の上場企業でも利用している方法です。
紺野昌彦
2件のフィードバック
[…] 前回のコラム記事で、国外財産調書について触れましたが、このように海外資産に対する国の締めつけは年々厳しくなりつつあります。この財産調書とは3年前よりスタートし、昨年には […]
[…] 3年前に制度化された国外財産調書制度や国外債務調書制度があげらます。 これは海外に5000万円以上の資産(不動産、証券、預金など)を持つ場合毎年年末12月31日時点で所有する海外資 […]