アムネスティー法案(インドネシアの租税回避恩赦法)
インドネシアで2016年6月にタックスアムネスティー法案が可決されました。
このアムネスティー法案とは、インドネシアで課税対象となる資産を隠しているインドネシア人やインドネシア法人が対象の租税回避や脱税の恩赦法です。
ここ数年間インドネシア議会で議論されていた経緯がありますが、後押ししたのはパナマ文書事件。
パナマ文書の流出事件には、インドネシアの政治家、官僚、実業家の名前の多くが掲載されており、議決が早く進んだ事が指摘されています。
当初はインドネシアのジョコ大統領は、徹底した調査を指示してたようですが、今回のタックスアムネスティー法案でこれまでインドネシア人やインドネシア企業が、租税回避した資産が恩赦で開示され、また海外にフライトした資産がインドネシア国内に戻る事は、インドネシア国の年間GDP以上になるとの試算もあることから、法案可決した経緯があるようです。
インドネシアの遅れている税務事情
インドネシアは多くの国々よりブラックボックス扱いされている感があります。
それもそのはずで、現在インドネシアの税制整備は大きく遅れており、中小零細企業に至ってはまともな納税をしている企業も少なく、税務当局の機能も大きく遅れている背景があります。また各国との租税条約の不安定な状況と事実上開示請求があっても応じることができないインドネシアの体制から言われているようです。
このように税務機能の低さと、自国通貨の弱さからもあり、インドネシアの富裕層は隣国のシンガポールなどをはじめ多くのタックスヘイブン地域に資産を分散して保有している状況もあったようです。
今回のアムネスティー法案でインドネシア財務省は国内の資産、海外の資産で国内に還流させる場合の税率を以下のように定めています。
2016年 7月から9月中に申告した場合 課税率2%
2016年 10月から12月中に申告した場合 課税率3%
2017年 1月から3月中に申告した場合 課税率5%
と段階をおいて税率を上げ、海外にフライトしている資産の国内還流を言う流しています。
また海外で保有される続ける資産についても以下の恩赦措置を発表しています。
2016年 7月から9月中に申告した場合 課税率4%
2016年 10月から12月までに申告した場合 課税率6%
2016年 1月から3月までに申告した場合 課税率10%
この3段階でインドネシア当局に申告が認められているのが特徴です。
今回のこの措置でインドネシア財務省は、インドネシアのGDPを上回る8770億米ドルを超えるインドネシア人の海外資産があり、これらに課税することと、国内への投資を促す効果があると考えています。
海外に資産を持った富裕層は、2%から5%の税率を支払い国内に持ち込み資産を再投資することと、継続した海外で保有されつづける資産に対しても4%から10%の税率で納税申告すれば、過去の追徴課税も免除になりインカムを国内に還流させることも可能となるのでインドネシア経済に対して一定以上の効果があると見られています。
結果この措置でインドネシアの歳入は44億ドル以上増加する見通しだとか。
インドネシア不動産、インドネシア株の高騰
このタックスアムネスティー法案の可決、実行により国内に多くの資産が還流することでしょう。
これは現在高騰中のインドネシア都市部の不動産の高騰につながるとの見通しもあります。
インドネシア不動産協会は、前年比で10%から12%の成長が見込まれるのではと資産をだしています。
また昨年10月のインドネシア法改正で不動産リートが合法化されましたので、不動産の金融商品も多く出回る可能性もあります。
今回のタックスアムネスティー法案の可決前でも既にインドネシアのチプタダナ証券などでは不動産リート商品が販売開始され人気を博しています。これらの資料も直接取り寄せましたのでまたの機会に紹介したいと思います。
紺野昌彦