中国の軍事的驚異を検証
こんにちは紺野昌彦です。
今回は前回ブログに引き続き、年々存在感を増す中国についてです。中国は今回2019年の全国人民代議員大会、いわゆる全人代で税率の軽減を中心に経済強化政策などを数多くお披露目しました。
またこのような経済政策だけでなく、軍事力の強化に直接的に繋がる軍事費も増加させた報道を、ご覧になった方々も多いでしょう。
日本においても尖閣諸島での中国との問題で、これら軍事的プレゼンスに繋がる事柄は、注目度も高いでしょうし、あらぬ憶測や直接的な影響を危惧する論調の根幹になって行くのでしょう。
さてこの中国が軍事力に物を言わせ武力侵攻を将来行う可能性ですが、日本に対しては「極めて低い」と考えています。
ネット上のいろいろな論調を見ていると、日本に対する懸念ばかり先行していると思われますが、日本のように完全に個別の主権国家との軍事トラブルより先に、一応は一つの中国である中華民国、いわゆる台湾に対し実行する懸念の方が、日本よりももう一段上の状況ではないでしょうか。
中国は台湾とケリを付けない限りは、おそらくは日本との摩擦はこれ以上の拡大は行わないと考えていいと思います。また尖閣諸島の日本との問題も実は間接的には台湾へのプレッシャー攻撃でもあるのです。
メインランド中国からすると、台湾の位置づけは、ひとつ中国、すなわち内政の範囲であり国内問題。他の主権国家に対する侵攻でもなく、自国に部隊を進駐させる行為と見なすレベルだからです。
それでもその台湾に対しても、軍事的な侵攻や衝突は米国を始め国際世論も意識するでしょうし同じ東アジアや東南アジア諸国も大切な貿易相手国でもあり、様々な要因から「極めて低い」と考えていいとも思います。
過去に台湾海峡危機という軍事緊張を、中国と台湾は発生させています。台湾海峡危機とは1950年代から1990年代において中国と台湾の間に発生した軍事的な緊張でした。
特に記憶に新しいのは1996年の台湾海峡危機で、米国の第七艦隊すら有事備えて、台湾海峡付近に出動する事態に至った軍事的緊張状況でした。
ちなみにこの年の沖縄への観光客は極度に激減しています。確か沖縄の企業倒産件数は過去最多だったとか。
さて台湾との軍事的な緊張も1996年が最後となっており、チベットやウイグルの問題なども危惧されていますが、これも中国から見ると中国の内政での問題に区分されます。もちろんここではその良し悪しは別議論としましょう。
それでは他の主権国家などへの対外的な緊張を見ていくとどうなのか。
1959年から62年にかけてですが、中国とインドの国境線が曖昧であったことなどが要因のひとつとして中印国境紛争が発生しています。両者共で数千死傷者を出した軍事衝突です。
1969年3月に旧ソビエト連邦とアムール川の中洲のダマンスキー島の領有権を巡って大規模な軍事衝突を起こしています。また同年8月にもウイグル自治区で旧ソビエト軍と軍事衝突が発生した、いわゆる中ソ国境紛争があります。
1979年は中越戦争が中国とベトナムの間で発生。原因は中国寄りのポルポトカンボジア対してベトナム軍が侵攻し、カンボジアの一部領有したことの懲罰措置として、中国軍がベトナムへ侵攻する軍事行動を起こしました。
基本的には中国の軍事衝突や軍事行動は、この1979年が最後。内政問題で米国なども巻き込む可能性のあった台湾海峡危機も1996年が最後です。
もう一つ足すと89年の天安門事件がありますね。言えばこれも国内問題。
中国の経済成長
そしてこの軍事衝突の減少と同時に、中国の経済成長が著しく伸び出す背景が発生してきました。
それは1978年からスタートする中国の改革開放経済が主に挙げられます。
いわゆる資本主義経済の導入と、国内市場を外国企業に段階を置いて開放していく政策で、世界経済の一員として参入する政策となります。
これにより中国のほぼ鎖国の単一国家としての様相から、国際的に多くの国々と関係を持つ新たな中国がスタートするわけです。要するにこれまでのように安易に武力行使が出来ない環境もここから始まったのです。
同時に90年代後半からはインターネット化が顕著となり、情報を制限をかける中国であっても、情報化社会の渦に巻き込まれることとなり、これは中国国内にこれまで存在しなかった世論というものと、一定以上のリテラシーを持つ国民も増加していくこととなりました。
現在でも欧米や日本に留学する中国人留学生がその一部の例でしょう。
中国国内における状況と国際社会における評価や、一般論という世論が世界には存在し、外で学び国に戻るを繰り返す事で、リテラシーの高い知識層を一定数以上を持つ事になりました。
結果として、経済的な国際関係、そして国際的な世論、リテラシーが大幅に上昇した国民と、形成されつつある世論が、90’年代以降現れることとなったのです。
中国政府が一番に持続したいことは、中国共産党の1党支配の継続です。
この為には国内の経済安定が不可欠となります。経済不安定、また大幅な景気後退は国内の利に貪欲な大衆、世論に、最も悪影響を及ぼすものとなります。
これが中国共産党の1党支配に最も揺るがす楔となる不安定要素となるからです。
この不安定要素は国外との経済関係や、経済摩擦、そして経済制裁が極めて悪影響及ぼす事は十二分に理解しているでしょう。
このような背景が、79年以降中国が対外的な軍事力の行使を行っていない所以なのです。
現在の中国の軍事予算の増強の背景
中国が世界に扉を開き、世界経済に大きく関わりを持ち出したのは、前述の1978年の改革開放からとなります。もちろんある日突然という事ではなく、この日を境に段階置いて、改革開放経済政策にシフトしていくのですが、一般的には2000年に入ってからでしょう。特に2008年の北京五輪、2010年の上海万博が大きくリテラシーを上昇させ、自由主義社会に関わりを持った時期かもしれません。
このように中国が格段に経済力を身に付け出したのは2000年以降となります。
当然それまでも軍事力の近代化には努めていたのですが、中国の総兵力は約230万人で、2000年頃は約300万人の兵力でした。
この兵力は旧式戦力で、日本や米国式に例えると、1960年代前後の兵器の配備でした。これを2000年代に入り急激に近代化しているので、大幅な軍事予算が必要な背景があるのです。
それでもせいぜい90年代後半の戦力に拡充出来ている程度でしょう。ただし一部は最新鋭の装備を受領した最精鋭部隊でしょう。ですが多く見積もっても全体の10%から15%にも満たないのではと思います。
日本の自衛隊の総兵力でも約21万人でその装備を最新鋭で維持し続けるので、約5兆2000億円です。耐水中国が大半が旧式の装備の約230万人の兵力で、約19兆円。中国国民ひとりあたりのGDPも伸びた今、この額では装備の更新がやっとな額かもしれません。人件費は安価でも最新装備は同額に近い価格のはずですからね。
遠征などには程遠いことかもと。。
また中国はこれでも最精鋭戦闘機の数も少なく、空母も練習空母ようなロシア払い下げしか持ちません。
仮に中国が本当に驚異の軍事力を備えるまでにはあと15年は必要でしょう。もちろんこの感に台湾が中国に完全に併合されると言う事態が起きれば、その時こそ中国は制海権を第一列島線(現在の沖縄から台湾以内の海域)から第二列島線(グアム、サイパンまでの海域)まで活動海域を拡大はしてくる可能性はあります。
もちろんこの頃の米国のスタンス次第でもあるでしょう。ただし現在の米中の経済摩擦ですら中国経済には多大な影響を及ぼしています。結果として今回の全人代では米国の意にそう政策すら目に付く程なので、国際的な世論や、米国などを意識している、国内経済には神経も過敏なのも、多くの皆さんも理解したのではないでしょうか?
中国のGDPはかつての15%近い高い成長率から、現在は6.5%にまで収縮しています。おそらくは実数ではもう少し低いでしょう。
この財政の圧迫は、現在の軍事力の維持が精一杯でしょう。むしろ前述のように自衛隊の21万人に対、中国の230万人の軍事力の差では、維持がいいところで軍事侵攻は経済的ダメージは途方もないことです。
むしろ中国国民1人当たりのGDPも日本の3分の1ほどに迫ろうとしている現在ですので、むしろ19兆円は対比として適当な数字なのかもしれません。
これが世間の論調ほど僕が中国の軍事力や軍事的な影響を気にしないと感じている理由なのです。
前編のブログはこちら → 中国の日本不動産の買い占め
紺野昌彦