アジアインフラ投資銀行は元の国際化によるドル離れ戦略か?

アジアインフラ投資銀行(AIIB)は元の国際化によるドル離れ戦略か?

昨日のブログに引き続きアジアインフラ投資銀行についての検証。
アジアインフラ投資銀行に先立ってアジア開発銀行は、アジアの経済成長を見据えた1966年にアメリカと日本の主導の元に創設された。
世界的な金融機関の創設はこれで3例目で、初めはIMF(国際通貨基金)世界銀行とで、2015年6月に調印されたアジアインフラ投資銀行は4例目となる。

世界は時代と共に環境も大きく変わる。第二次世界大戦前は英国、フランスなどヨーロッパ主導だったのが、戦後はアメリカ主導となった。
経済もまた同じで、欧米主導の製造、産業国は、自動車や家電のシェアとともに日本にシフトし、近年では中国、韓国、台湾などと移り世界の工場はシフトしてきた。
もちろんこれに合わせた各国の収益メカニズム、そして外貨手入の順位入れ替わりも起きるものでもある。GDPで世界第2位だった日本は順位を中国に譲ることとなったのは記憶に新しい。

今ではASEAN(AEC)が地球上でトップクラスの経済発展地域となっているが、それに次いでバンクラディッシュ、インド、東欧、そして次世代的にはアフリカと考えられている。
そもそもこれらの国際発展に寄与するために創設されたのが、アジア開発銀行であるが、同銀行の資本規模では到底まかない切れないのも事実だ。

このような背景に創設されようとしているのが、中国主導のアジアインフラ投資銀行となる。
かつてより中国は新たな世界基軸通貨に関して提唱を唱えているが、今回のアジアインフラ投資銀行の設立はその第一歩となる可能性は高い。
元の国際基軸通貨は考えにくいが、創設後かなり中国元が通貨の中で力を持つことは安易に想像ができる。
昨日のブログにも書いたように、先進主要7カ国中、5カ国がアジアインフラ投資銀行に出資、加盟を表明した翌日の為替レートで中国元は、初の1元=20円を超えたのも偶然ではないだろう。

このような視点で見れば、香港ドルと中国元との為替相場の一体化を進めようとしている中国の行動も頷ける。
香港は世界の4大金融都市として今も君臨しているが、その影響力はアジア圏では大きい。

先月に中国のある高官が「韓国経済は中国と共に歩むのが好ましい」と発言したのも意味深である。
そして最新の報道では、韓国はデフォルトの危機に面している。
巨額の債務を韓国政府が隠蔽している可能性に触れた報道が出ているが、これを救済するのが、アジアインフラ投資銀行がはじめの案件になるのかも知れない。
現状でも韓国は中国経済に依存度は高い。
防衛の面ではアメリカとの同盟関係があるが、韓国の窮状を中国が見逃さないだろう。

ただ水は高いところから低いところに流れるのが常である。
ヨーロッパで始まった産業革命は、ヨーロッパ大陸を産業大陸と化して、やがてアメリカ合衆国が世界の工場となった。
戦後、日本が朝鮮戦争、ベトナム戦争の特需を得て生産国となり、世界第二位の経済大国へとなった。今やヨーロッパも経済連帯を強める必要に迫られEUを設立し、基軸通貨としてユーロが導入された。
かつての経済大国は、大きな債務に悩まされ過去の富は新たな新興国へ移る。

これはまったく持って自然の摂理なのかもしれない。
アメリカや日本のプライドがどこまで続くのか、経済の波動の波のように水の如しとなるのか。

元のウエイトが高くなるのは2010年頃から予想していたことなので、私は2012年に中国銀行など中国系銀行に預金の一部を託している。
当時は1元=12円。1元が日本円で30円、40円となる日も遠くないかも知れない。

アジアインフラ投資銀行

アジアインフラ投資銀行

 

アメリカの焦り、中国外交の勝利

既存の国際金融枠組みの全てが米国の利害に沿ってのも事実であり、この枠外で中国は多くの途上国を経済的な支援を行ってきた。

一例を上げるとカンボジアへ支援した中国の総額は日本の10倍以上の額である。
スリランカ、ミャンマー、バンクラデッシュやアフリカ諸国も中国の巨額な支援が行われているのも事実で、このような個別での支援に自ら枠組み作り上げたとの見方もできる。

前述のアメリカの利害に沿ったものだが、たとえばIMFや世界銀行は、事実上米国のみが拒否権をもってきた。2008年の世界金融危機を受けて発足したG20には新興国や途上国の一部も参加し、米国主導の金融秩序に批判が加えられた。その結果、2010年、IMFは新興国の発言力を強化するために、これらの国ぐにの出資比率を増やし、投票権の比率を引き上げる改革を承認したのである。

このような背景が多くの途上国が中国を支持してアジアインフラ投資銀行に加盟した背景でもある。

しかし、その後も米国議会、とくに野党共和党は中国など新興国の影響力拡大に異議を唱え、いまだに出資比率改革は実現していない。こうした改革の遅れが、中国の提唱した構想に対する途上国の「期待」につながっているのである。

こうした国際金融秩序の改革を求める動きに、米国は焦りは大きい。

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2件のフィードバック

  1. 2015-07-04

    […] Previous story アジアインフラ投資銀行は元の国際化によるドル離れ戦略か? […]

  2. 2016-11-10

    […] あと静かになっていたアジアインフラ投資銀行も息を吹き返しそうですね。 […]